VMATキックオフシンポジウム ~東北初の動物医療支援チーム発足を考える~ 開催

 岩手大学三陸復興・地域創生推進機構の三陸復興部門被災動物支援班は1月20日(土)、岩手大学北桐ホールを会場にVMATキックオッフシンポジウムを開催しました。VMAT(Veterinary Medical Assistance Team)とは獣医師や動物看護士などが大規模災害などの際に動物救護活動するための専門的訓練を受けた獣医療チームのことであり、このシンポジウムでは過去の震災での獣医師等の活動をもとに東北初のVMAT結成に向けて、課題や支援体制などの理解を深めました。 はじめに被災動物支援班の山﨑弥生特任研究員が「東日本大震災における岩手大学の取り組み」をテーマに東日本大震災時の活動と現在行っている取り組みについて紹介しました。同班は震災直後から被災地に移動診療車(ワンにゃん号)を派遣し、高度獣医療の提供をしたり、被災地の子供向けに「命について考えるセミナー」を開催し小動物とふれあれるアニマルセラピーなど被災地支援を行っています。 基調講演では、日本獣医生命科学大学獣医学部の羽山伸一教授が「VMAT災害医療支援チームについて‐被災動物救護体制の課題と対策‐」と題して、日本の被災動物への支援体制の不十分さを指摘し、各都道府県にVMATをつくって組織化する必要性などを説明しました。東日本大震災以降も災害が続き住民や飼育動物が被災している日本で、共通対策を進めるには行政や動物医療従事者の役割を明確にし、協力体制や人材育成手法を確立していくことが最優先課題であると述べました。群馬県VMAT隊長群馬県獣医医師会・小此木動物病院の小此木正樹院長は「群馬県におけるVMATの取り組みについて」と題して、熊本地震でチームを派遣した活動事例や、動物を連れた傷病者への対応訓練の様子を紹介した上で、被災地で正確に情報収集するためには関係者との訓練が必要不可欠との提言がありました。 最後に基調講演者2名の他、司会で同班長の佐藤れえ子教授、パネリストで岩手県獣医師会の佐々木一弥会長、動物愛護団体「動物いのちの会いわて」下机都美子代表、同班岡田啓司教授を加えパネルディスカッションを行いました。「東北のVMAT発足を考える」をテーマに議論され、「獣医療関係だけでなく保健や福祉など他分野の人と常に顔の見える関係を築いておくことが大切である。」「震災時は人命救助が優先だが、ペットのことが気になり、不安な生活を送る被災者は多い。動物の命を救うことで被災者支援につなげたい。」などの意見が出ました。 今回のシンポジウムは東北初のVMAT設立に向けて貴重な場となりました。