公開講座「国語科・新学習指導要領に基づく実践への展望 ― 話すこと・聞くことの学習を中心に ―」を開催しました
下記日程・内容にて実施しました。
<第1回 スピーチ 11/11>
教科内外で扱われる「スピーチ」では「『どのくらい(量)』『どんなこと(質)が』話せればいいのか」が指導において重要な観点となる。また、「良いスピーチ」を問われた際にたいていの人が思い浮かべるものの特徴としては「わかりやすい」「感動」という二つの要素が含まれていることが多い。しかし、この二つの要素を内包したスピーチをすべての子どもができるのかといえば疑問である。すべての子どもが「感動」という要素を含みこむのは困難である。学校で行うスピーチで重視すべきは「わかりやすさ」であり、主張の明確さやエピソードと思いのリンク、論理性、間のとり方など「わかりやすさ」の原点となる技術を子供たちが身に付ける必要がある。また、学校で行われるスピーチは「話すことの暗記」になってしまうことが多く、ただの読み上げ、つまり生きた言葉ではなくなってしまっている場合が比較的多い。子どもは話したいことがあるから話せるのであり、話したいことでなければ生きた言葉にはならない。「話すこと・聞くこと」領域で重要になる言語意識は「相手」と「目的」である。相手に伝えるという目的意識と相手意識を達成するためには、上記で述べた「話したい」という必要感とそれを効果的に相手に伝えるための技術を大切にして行う必要がある。
<第2回 対話 12/9>
1.テーマ:音声言語指導において言語活動としての「対話」の重要性の確認すること
対話の活動の目指すこと、またそれを技能として身に付けるための学習のプロセスを理解する
2.国語教育における「対話」について
国語教育としては、「いつでも、だれでも、どこでも」対話することのできる学習者を育んでいくことを目標にすることが大切である。(対話への教育) それは、対話を用いることによって可能となることでもある。(対話による教育) 両者を統合したところが国語教育におけるめざす教育となる。
3.国語科学習としての「対話」について
言語活動としての対話は、話すこと・聞くことの学習だけでなく、読むことの学習の中でも方法論として活用される。つまり学習が、目標と内容において二重性を帯びているということだ。方法として対話を用いながらも対話そのものを育てていくためには、教師自身が学習者に身に付けたい力や学習内容を明確にする必要がある。そのための授業想像の力が教師に最も強く求められる専門性である。
<第3回 話し合い 1/27>
1.テーマ・話し合い指導における現職教師が思う現状の把握すること
・話し合いにおける「話題」の重要性を考えること
2.国語教育における話し合い指導について
国語教育における話し合いで重要なこととして、以下の3つが挙げられる。
①話し合いに必要な道具を十分に与える。
②学習者のレディネスを把握する。
③良い話し合いのモデルを提示する。
以上のことが話し合い指導で考えなくてはならないことである。このほかに、話し手と聞き手が同じ土俵にいて、なおかつ相手の考えを受容すること、子どもたちが話したいという気持ちを持っているかどうかも大切になる。また、教科書には聞き手の反応の仕方などもモデルとして載っているが、型を教えるだけでは話し合いとして成立しない、ということも理解していなくてはならない。そして、話し合いで最も大切なのが「話題」である。話題を提示し、ゴールに行くまでに何を話し合うのか、その話題で話し合いは深まり、広がるのか。子ども達の興味の持てるも話題でなければ、指導の前に話し合いが成立しなくなってしまう。普段の子どもの表情・動作(様子)をよく見てどんな話題が適切なのかということを考えなくてはならない。
<第4回 全体総括 2/17>
1.今回はその総括として、話すこと・聞くことの学習における指導の目標、方法といった理論のまとめを行い、また受講者である現場の先生方の国語科学習、大きくは学校での指導全般で抱えている疑問点や問題点を討論的に考察した。
2.学びの成果
国語科の領域の一つである話すこと・聞くことの目標はこれまでの先行研究をまとめると、個人内における論理性や思考力といったスキルや能力を重視するものと、集団内での人間関係の形成や関係を持つことで得られる視座の転換といった社会性を重視しるものとに分けられる。これら両方をカリキュラムの中に包含していかなければならない。その際に身に付けさせたい技能ばかりが先行することのないよう、学習者の事態を踏まえたPDCAや話題の提示というのが非常に大切となってくる。また実際の指導過程において学習の積み重ねによるメタ認知の生成も、話すこと・聞くことの学習の重要なキーワードとなってくるといえる。
後半に聞くことのできた討論形式での現場の先生方の生の声は、実際の教育現場の現状や先生方の努力や葛藤を垣間見ることのできる、貴重な“話す・聞く”機会となった。